「もうすぐ、あとほんのちょっとだよ、金環日食」
「金環日食…」
「あっ、論理とかいいからね?」
「太陽と月、地球が一直線に並ぶことによって地球の一定の位地から観測することができ」
「小難しく言うな!いい!それ理科の先生が言ってたから!」
「理科の先生?誰だい?」
「突っかかるとこそこなの?」
「ああ、もうすぐ金環になるね」
「えっもう?あ…ほんとだ」

月の背から、太陽の光が漏れ出している。
月がゆっくり動き、光が美しい円形になったとき、彼の手が、太陽の輪を掴んだ。

「これ、君にあげる」





「わぁぁぁぁぁぁ!?」

飛び起きたわたしの心拍数と言ったら、たった今この瞬間の誰よりも高かったろう。口呼吸が酷い。涼しい朝に似つかわしくない汗が頬を伝う。どくん、どくん、脈が、鳴ってる。

「…どうかしたのかい?」

きょとんとした顔の自然数がわたしに問いかけた。口呼吸のまま、顔だけNくんに向ける。ああきっとわたしアホ面だ。汗だらだらでださい。爽やかな風が、ベッドの隣の窓から入り込んでくる。いいにおいする。甘い花の匂い、と、朝ご飯の匂い。やっと、落ち着いてきた。

「うん、あのね、寒い夢見た」
「寒い?それにしては、汗かいてるけど」

そういう問題じゃないぜハニー。口には出さない。ビコゥズ、彼のことだから、ハニーとは普通女性を指す言葉だ何故僕に使うだの抑何故女性を指す時蜂蜜と呼ぶのかだのなんだのって言う。ぜったい。ぜったい言う。なにがなんでも言う。
…そんなことはどうでもよいのです、朝ご飯だ、うん。

「そういえばしっているかい、今日は金環日食だよ」

ひやりと、こんどこそ寒くなった。





環日
(ほら、輪になった)
(ほんとだね)
(…環というのは、台集合に加法、乗法という二種類の…)
(いい!そういうのいいから!)





ちがうんです…わたしじゃなくて先生が…(責任転嫁)